書評『問題解決ラボ(佐藤オオキ著)』

書評-『問題解決ラボ』「あったらいいな」をかたちにする「ひらめき」の技術

佐藤オオキ著
20150602

 

問題解決ラボ――「あったらいいな」をかたちにする「ひらめき」の技術

NHKのSWITCH INTERVIEWで初めて知ったデザイナーの佐藤オオキさん。

何冊か本を出されていましたが、デザインを勉強中の友人がこの本を推してくれたので、図書館で借りてきました。

(図書館って発売間もない本も蔵書されていて驚きました。リクエストや売り上げ数以外に、どんな仕組みで新刊本の蔵書をする/しないを決めてるんでしょうね。)

 

デザイン目線で考えることで、新しい視点を持ち、問題解決していく。

佐藤オオキ氏の考えと、その結果生み出したものの写真やイラストが載っています。

かなり平坦な文章な上、写真やイラストが補足してくれるため読みやすい。

 

活躍している人の頭のなかってどうなってんの?どういう道筋で考えてあんなことでできたの?なタイプの本ですね。

何かしらの分野で突き抜けた人が、一度は出すタイプの本です。

友人曰く、これまでにも数冊出されている中でもよくまとめられている、とのこと。

 

構成は、

の5章立て。

 

特徴として、各項目にオモテとウラ(補足ページ)がある。(はじめに、でこれについて記されてます)

オモテは、筆者の佐藤の視点。こんな依頼で、こう考えデザインし、この製品になりましたという思考の道筋。
ウラで読者目線に降りてくる。

オモテで、こうやってアイデア出してますとあったら、

ウラで、そうは言ってもアイデア出ないよ〜と感じるであろう読者層に対してのフォローがあり、その出ないよ〜と思っている詰まりどころを解消してくれる。

それぞれ軽く、中身を紹介。

はじめに
著者にとってデザインとは:
日常のちょっとした出来事を見逃すことなく、そこから何らかのアイデアを抽出すること(例:海外のトイレで遭遇した出来事)。
プラス
新しい視点を提供することで目の前の課題を解決すること(手掛けるプロジェクトが多岐に渡る)。

 

1章:問題発見
制約がつきもの。1〜10まであったら、どれか一つを無視して考えてみる。これを10通りしてみる。そうすることで解決するなら、その制約を排除できないかやってみる。

 

競合商品AとBがあったら、では全く違うCで勝つぞ、ではなく、そのスキマにヒントがある。

 

佐藤は、本を読むのが遅い。それは二度見するから。一度読んで戻る。これは、脳がものごとを考えるメカニズムと関係が深い。
第一印象と、二回目以降見たときに何があぶり出されてくるか。

 

世界の一流デザイナーは、自分のゾーン(これだけは負けないという得意分野)からはみ出さないという印象。佐藤はそうした一流に憧れ、自らはまだまだだと思う一方、何事もできるできないは別として、とりあえずやってみるという。
ムチャぶりに応えて、たくさんはみ出していくこと。まず、ムチャだと思う自分に気づくことで勝手に決めてしまった「できないと思い込んでいること」に気づける。そして、ムチャぶりを受けられることは、「あいつにやらせてみたら面白いんじゃない?」という期待を持ってもらっているということ。新しい課題に気づき、解決法を考えるチャンスをもらったということ。ムチャぶりを期待と捉えて、その期待を一ミリでも越えることに集中すれば、問題が見えてくるかもしれない。

 

3章:アイデア出し
イデアは探さない、「ボヤッと見」で視点をズラす。
「中心視」と「周辺視」
中心視:一点を凝視することで正確に捉え、それ以外の情報を見落とす
周辺視:網膜の周辺部を使って瞬時に動きや全体像を把握する
パイロットやスポーツ選手に後者は不可欠な能力。中田英寿も。
周辺視を鍛える、これは何かとリンクさせて見る。ということ。あれってこれっぽいなーと。どんなくだらないことでも、点と点を線にしてしまう遊び。

 

新しさの中に、懐かしさ、これまでに経験したことのある感覚をいれる。

 

図と地の反転現象
モノは背景から浮かび上がることで初めて認識できる、という近く知覚心理学の考え方。

 

グレー思考。全肯定もせず、全否定もしない。ポジティブとネガティブの両面で見る。

長く使われているもの、長く変わっていないものに興味をもつ

 

3章:問題解決

不安と安心の狭間
好きなようにデザインしてみれば?は、「従来の正攻法に縛られずに、自分に見えている正解の道筋を辿っていいよ」という意味。

 

デザインとマーケティング
マーケティング。過去から今に向かってくる。
デザイン。こうなりそうじゃないか、という予測から今に降りてくる。逆算。

(おわりに、ではこう言い換えられている

マーケティングは、問題から答えを出す技術。
デザイナーは、遠く離れたところに答えをイメージする。それを意識しながら、目の前の課題と照らし合わせて、正しい問題を見つけること。

 

4章:アイデアの伝え方

「素人目戦」を持ちつづけるための、「もの忘れ」のススメ

商品はメッセージ。

目に見えないものを、「見える化」して五感に訴える。 

 

5章:デザイン
デザインとは人に対して何かを伝えるための手段。カッコ良くするものではない。

 

高級ファッションブランドが、家具や家電を作っている。ターゲットは、中東やアジアの富裕層。建築ラッシュがひと段落し、一点一点コーディネートするのは面倒。

 

文化に起因する状況も。
欧州:家で客人をもてなす→デザイン家具メーカー栄える。
一方、レストランやバーなどの飲食店デザインはそこまで発展せず。日本は主に逆の特徴。

 

  

この本は買いだと思います。図書館に返却し、近々購入します!

 

問題解決ラボ――「あったらいいな」をかたちにする「ひらめき」の技術

問題解決ラボ――「あったらいいな」をかたちにする「ひらめき」の技術